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  4. 売主が知っていた土壌汚染―「1年以内」の特約は通用する?

売主が知っていた土壌汚染―「1年以内」の特約は通用する?

2026 8/26
令和7年度
2026年8月26日
出題年度
令和7年度
問題番号
問10
選択肢
肢3
大分野
権利関係
テーマ
契約不適合責任
最終確認日
2026年8月26日

今回の問題

Aを売主、Bを買主とする甲土地の売買契約による甲土地の引渡し後に、目的物の品質に関して契約の内容に適合しない土壌汚染が見つかった場合の売主の担保の責任(以下この問において「契約不適合責任」という。)に基づく損害賠償に関する次の記述は、民法の規定、宅地建物取引業法の規定及び判例によれば、正しいか。
甲土地の引渡しの日から1年以内に契約不適合の通知をしなければ売主は責任を負わない旨の特約がある。Aは甲土地に土壌汚染があることを売買契約締結時に知っていたが告げなかった。この場合、Aが宅地建物取引業者である場合にはBは損害賠償請求できるが、Aが宅地建物取引業者でない場合には損害賠償請求できない。

物語

工房の基礎工事が始まって三日目、車持麻衣の携帯に現場監督から電話が入った。
「少し、現場まで来てもらえますか」
着いてみると、掘り返した土がブルーシートの上に積まれ、その周囲だけロープで囲われていた。
「検査に出した土から、有害物質が出ました。このままでは工事を続けられません」

十二年勤めた照明器具メーカーを辞め、自分の工房を建てるはずだった。
奥に加工機械を置き、道路側には小さな展示室をつくる。
退職金・借入金という現実的な資金の話も含め、夢を計画に落としていった。

麻衣がこの土地を買ったのは、二年半前だった。
近所に住む久世義彦という元高校教師が親から相続した土地を持て余しており、老後の資金にするため売りたいという話だった。

契約の日、久世は契約書の特約を説明しながらこう添えた。
「私も土地を売るのはこれが初めてなんでね。何か問題があれば、一年以内にってことでお願いします」
麻衣も内容を確認して、その契約書に判を押した。
まさか、その一年を大きく過ぎてから土の中に問題が見つかるとは思っていなかった。

その日の夕方、麻衣は久世に電話した。
「土から有害物質が出たそうです。処分だけでもかなり費用がかかります」
久世は少し黙ったあと、落ち着いた声で答えた。
「それは大変ですね。けれども、土地をお渡ししてから一年以上経っておりますので」
「契約書にもそう書いてあります。私は不動産会社でもありませんし、もう私の責任ではないと思います」

電話を切ったあと、麻衣は契約書の特約と自分の判を恨めしく見た。
工房の設計や融資に時間をかけ、工事を始めるのが遅れたのは自分だった。
もっと早く掘っていれば、一年以内に気づけたかもしれない。
久世も不動産屋というわけではないから仕方がないのかもしれない。

ところが数日後、現場監督から写真が送られてきた。
掘った土の中から、細い樹脂製の管が何本か出てきていた。
「これ、以前に土壌調査をした跡かもしれません」

麻衣が現場に急行し、土地の隣で長く古道具店を営んでいる主人に聞くと、意外な答えが返ってきた。
「ああ、やってたなあ。あんたが買うよりも前に、一度業者が来て土を掘ってたよ」
そのころ、この土地を買おうとしていた会社があったという。

麻衣は会社名を突き止め、事情を説明して連絡を取った。
担当者は覚えていた。
「うちも買うつもりだったんですが、調査で汚染が出ましてね。それで見送ったんです」
後日、当時の調査報告書とメールを送ってくれた。
調査報告書には、基準を超える有害物質が検出されたと書かれていた。

日付は、麻衣が土地を買う八か月前。
報告書を受け取った人の欄には、久世義彦の署名があった。
汚染土の処分にはかなりの費用がかかるため、購入を見送る。
そう伝えた会社に対して、久世は返信していた。
《この処理費用を負担すると、売ってもほとんど残らなくなってしまいます》
久世は、自分に売る前から知っていた。

麻衣はもう一度、久世に電話した。
「報告書を見ました。汚染が出ていたことも、知っていましたよね」
「どうして教えてくれなかったんですか」

久世にも事情はあった。
妻が介護施設に入ることになり、まとまった金が必要だった。
最初の買主候補は汚染を知って離れていったのだから、次の相手にも話せば、また売れなくなる。

久世は最後に言った。
「黙っていたことは申し訳ありません。ですが、契約は契約ですので」
麻衣にも、それが引っかかっていた。

数か月後、麻衣の工事は再開していた。
汚染された土が運び出され、新しい砕石が敷かれていく。
その費用の負担は全て久世だった。

解説

結論: この記述は「誤り」です。

今回は、久世は土地を売る前から土壌汚染を知っていました。それにもかかわらず麻衣に告げていないため、「引渡しから一年以内に通知しなければ責任を負わない」という特約を盾にすることはできません。

久世が宅地建物取引業者でなくてもです。
たしかに宅建業者が売主となる場合には、買主に不利な特約について宅建業法上の特別な制限があります。そこで、「宅建業者ならダメだが、個人の売主なら一年経過後は免責される」と考えたくもなると思います。

しかし、不適合についての情報の非対称性は、売主が宅建業者か否かによるところではありませんので、麻衣は損害賠償を請求できます。

法改正確認日
2026-08-26
出題年度・番号
令和7年度(10月)|問10|肢3
公式出典URL
https://www.retio.or.jp/wp-content/uploads/2025/12/R7_question_answer.pdf
令和7年度
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